政治学者である苅部直先生は、著作の中でこう記した。
ある政治家や政党が、自分の希望を完全にかなえてくれる。そうした期待は現実の政治過程のなかで、必ず裏切られ、やがては失望を生む。いわゆる一般庶民の政治への無関心や冷笑の態度は、実は政治への過度な期待に由来しているのである。
政治家は、選挙や政治活動の中で様々な公約や目標を掲げる。人々はその実現を期待して票を投じる。しかし、真反対の考え方を持つ人間がわんさかいる政治の世界では、これらの公約を100%そのまま実現することは難しい。必ずどこかで妥協を強いられる。そしてその妥協案を見て、公約実現に期待していた人は反動で失望する。そして、「票を入れたところで変わらない」という冷笑主義に走るのだ。
結局、先述した通り、政治の世界は妥協の世界である。独裁国家でない限り(というより独裁国家であっても)、100%思いのままに事が運ぶことはない。大切なのは、それを自覚した上で、『期待しすぎない』事である。政治家を心の底から信じるのでなく、公約実現に取り組む機会を「まぁやってみな、ある程度上手くいったら嬉しいね」というスタンスで政治家に与えることである。仮に上手くいかなかったら、「お前じゃダメやったみたいやね、じゃあ別の奴にやらせてみるわ」という気持ちで、再び票を投じるだけである。
政治と向き合う姿勢は、この程度で十分である。これ以上のめり込んだら…ようこそこちら側へ。